2016年8月11日木曜日

今週の今昔館(12) 20160620

〇企画展「船場花嫁物語」、残りわずかとなりました

 平成28年6月26日(日)までの開催です。 
 会期中の休館日:6月20日(第3月曜日)、21日(火)

 江戸時代から経済の中心地として栄えた大阪では、船場の豪商を中心に武家の婚姻儀礼に倣った華やかな婚礼が執り行われていました。
 船場の商家では、嫁いだ娘が一生不自由しないよう着物や装身具、生活道具を調え、荷物目録を添えて婚家へと送り出しました。それは娘への財産分けという意味もあったようです。一方、花嫁を迎える婚家では専用の蔵をつくり、花嫁道具を収めたといいます。婚礼の儀式は、結納に始まり、花嫁道具の荷物送りの行列、これらを披露する荷飾り、そして祝言披露宴と続きます。このような婚礼の伝統は、昭和の戦前期まで受け継がれてきました。
 本企画展では、昭和14年、船場の商家・廣野家が調えた花嫁仕度の品々を公開します。これらは、着物、宝飾品、家具調度品類いずれをとっても、職人が技術の粋を尽くした工芸品であり、船場商人の底力と大阪の文化の豊かさを示すものです。幸いにも戦火を免れ、大切に保存されてきた花嫁道具の数々をこの機会に是非ご観覧ください。

※企画展について詳しくはこちらをご覧ください。

拡大表示はこちらから


〇今昔館のあまり知られていない展示(その3)

 前回に続いて、8階近代のフロア「モダン大阪 パノラマ遊覧」の近代都市住宅年表のコーナーをご紹介します。
 15年前の開館当時からずっと展示されている年表ですが、手前に並んでいる冷蔵庫やアイロン、ガスコンロなどのくらしの道具の変遷の方に気をとられて、バックの壁面が年表になっていることに気が付かない方が多いようです。
 明治以降から現代までの大阪の住まいと暮らしの歴史を、「都市住宅の変容」を軸に、市街地や郊外居住の変化などの流れも含めて年表にまとめたものです。
 この年表の下の段には各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。
 今回は、年表の中ほど折れ曲がりの辺りにある、住之江の洋風長屋を見ていきましょう。


「住之江の洋風長屋」立面図

8階近代のフロアの「近代都市住宅年表」のコーナー

 この立面図を見て、今昔館に来られたことのある方の中には、「このパネルは知らなかったけど、この建物はどこかで見たような気がする。」という方もいらっしゃると思います。そうです。これは「住まいの大阪六景」のひとつ、「大大阪新開地」の模型制作のベースとなった立面図です。
 大正14(1925)年の「大大阪」誕生とともに新しく市域に編入された新市街地は「大大阪新開地」と呼ばれました。新市域では、組合施行による土地区画整理事業によって土地会社が宅地を開発し、その上に長屋建ての貸家を建設して大家に売却し、大家が賃貸住宅経営を行っていました。長屋の一部に大家が居住する場合もありました。
 この模型は、昭和10(1935)年頃の大大阪新開地=長屋住宅地の風景です。現在の阿倍野区、住吉区、住之江区辺りにある長屋を一つのまちに再編成したものです。伝統的な和風長屋に加えて、邸宅風の長屋や、洋風のモダンな長屋の町並みが50分の1で再現されています。大大阪新開地は既成市街地の外周部に新たに開発された住宅地で、当時のニュータウンにあたります。

大大阪新開地(住まいの大阪六景)
大大阪新開地(住まいの大阪六景)

 その中に、間口2間半でバルコニー付きの洋風長屋があります。
 3枚目の写真は洋風長屋の外観です。左端は2戸1の長屋。隣は4戸で1棟の長屋です。2戸ペアでデザインされていて、小さいものを大きく見せる効果もあって、おしゃれです。現在の大阪市住之江区西住之江に現存している長屋です。近代都市住宅年表のパネルになっているのは、この模型の制作のベースとなった4戸で1棟の洋風長屋の立面図です。

大大阪新開地の洋風長屋外観
 4枚目の写真は間取り(平面図)です。右側2戸は1階、左側2戸は2階を表わしています。2枚目の写真の4戸長屋の間取りになります。

 1階に台所、茶の間、玄関の間、6畳の間(床の間付)、縁側、風呂、便所があり、茶の間と6畳の間の間には廊下がとられています。2階には8畳の間と6畳の間、3畳の書斎があり、バルコニーがついています。前庭、裏庭付きで、よく考えられた間取りです。しかも、この間取りがピタリとはまるように計画的に道路区画がなされ、背割には汲み取り通路が確保されています。当時は便所は水洗ではありませんでしたから、部屋の中を通らずに裏から汲み取りができるように工夫がされています。

 間口が2間半あることによって、8畳の間や床の間付きの6畳の間(もちろん奥行き半間の押し入れ付き)が確保できます。また1間幅の玄関と4畳半の茶の間を並べることができます。間口2間と比べて平面プランのバリエーションが増えて、お屋敷に近い雰囲気も出せたのではないでしょうか。おまけに戦前の畳は関西間(京間)で、メートル間に近い大きさですから、ゆとりがあります。
 2戸ペアになっているのは玄関側だけで、奥は反転させずに風呂と便所が1戸分ずつ裏庭に突き出すようになっています。自然換気を重視して両面開放にしたのでしょうか?

洋風長屋の平面図(右の2戸は1階、左の2戸は2階)


〇今週のイベント・ワークショップ

6月22~25日、27日、29日~7月2日
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:11:30、14:30
※6月20日(第3月曜日)は休館日ですので、ご注意ください。

6月25日(土)
町家衆イベント ワークショップ 『組みひもストラップを作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費300円
*当日10時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆

6月26日(日)
イベント 筑前琵琶

和楽器の奏でる音をお楽しみください
出演:竹本旭将、福井旭巽
時間:14:00~15:00

6月26日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


町家衆イベント 絵本で楽しい時間
むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。じっくりとお聞きください。
時 間:14:30~15:00

そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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