2016年8月11日木曜日

今週の今昔館(16) 20160718

〇特別展のご案内 「中井大和守の建築指図 -世界遺産をつくった大工棟梁-」
 いよいよ、まもなく開催です。
 平成28年7月23日(土)~8月28日(日) (※会期中は休まず開館いたします。)


 重要文化財「大工頭中井家建築指図」は江戸時代の大工頭・中井大和守と配下の棟梁衆が作図した建築設計図です。中井大和守がつくった建物は、大阪城、江戸城、二条城、名古屋城、京都御所、清水寺、知恩院、北野天満宮、方広寺など日本を代表する建物で、現存する作品の多くは国宝や世界遺産になっています。建築指図の多くは300年以上の年月を経て、破損が進んでいました。そこで平成25年度から3ヵ年にわたって、国庫補助と住友財団の助成による保存修理を行いました。

 この展覧会では、修理された建築指図を中心に「大工頭中井家建築指図」を一堂に公開し、日本建築の意匠と技術の真髄に迫ります。
 詳しくはこちらをどうぞ。≫http://konjyakukan.com/korekara.html



 展覧会の関連イベントとして、講演会「20世紀の中井大和守-宮大工西岡常一棟梁の教え」を開催します。

 中井家初代の大和守正清は法隆寺棟梁から出発し、徳川家の御大工に昇りつめ、城郭、御所、寺社など、当時の代表的な建物の設計・施工を一手に引き受けた人物でした。20世紀を代表する宮大工の西岡常一棟梁も法隆寺大工で、昭和の法隆寺大修理や薬師寺西塔の新築に携わった名工でした。

 この講演会は、西岡棟梁の唯一の内弟子であった宮大工の小川三夫棟梁に「宮大工西岡常一棟梁の教え」についてお話しいただく企画です。

 『木のいのち木のこころ』(草思社)、『棟梁~技を伝え、人を育てる~』(文藝春秋)などの著作を持つ小川棟梁から、仕事のあり方や人の育て方などについてお話をうかがいます。
みなさま、奮ってご参加ください。

日   時:平成28年7月30日(土)13:30~15:30
       (受付開始:13:00~)
場   所:大阪市立住まい情報センター 3階 ホール
      大阪市北区天神橋6丁目4-20
定   員:200名(要事前申込、抽選)
申込締切日:平成28年7月20日(水)必着(お急ぎください!)
参 加 費:無料

◆申し込みはこちらからどうぞ。
https://www.sumai-machi-net.com/event/portal/event/32436



方広寺大仏殿 重要文化財 中井正知氏・中井正純氏蔵
清水寺絵図(部分) 重要文化財 中井正知氏・中井正純氏蔵

〇今昔館の「造り物(つくりもん)」

 いよいよ来週は天神祭、7月24日が宵宮、25日が本宮です。今年は24日(日曜日)が宵宮ですから、朝から天満警察(現在建替工事中)の前の旧若松の浜で行われる鉾流神事(ほこながし・しんじ)を見学するチャンスかもしれません。メインの陸渡御・船渡御は25日(月曜日)になります。この2日間は、今昔館へ着物・ゆかたでご来館の方は、入館料が無料となります!

 造り物とは、ありふれた日常品の「風合い」に着目し、それを何かに「見立て」て、人形や動物などを造ることです。江戸時代の大坂で生まれた文化で、江戸時代後期には「造物趣向種(つくりもの・しゅこうの・たね)」というマニュアル本が3冊出版され、3冊合わせると100を超えるアイデアが絵入りで紹介されています。造り物は通りの飾りに使われたばかりでなく、家業で扱う素材を利用して町家の演出にも登場しました。現在のショーウィンドウのように客の目を引く役割も果たしていたことになります。


 大阪町人たちは、寺社の祭礼などに奇抜な造り物を奉納し、そのアイデアと技術を競いました。その文化は全国各地に広がり、現在でも日本全国70か所以上で造り物大会が開かれています。発祥の地の大阪では、瀬戸物町の陶器神社「陶器人形」がその伝承を引き継いでいます。同業者仲間が商売物を材料にして造り物を作るやり方は、ごく最近まで他の町でもありました。雑魚場(ざこば)の住吉祭では干物、伏見町の恵比寿神社例祭では呉服、道修町の神農さんの祭では和漢薬や薬のパッケージが利用されていました。八尾市の「八尾木の民芸つくりもん祭り」は1977年に復活されました。「ひらかた大菊人形」もその流れを引いていましたが2005年に中断しています。 

 大阪くらしの今昔館では、平成13(2001)年の開館当時から「夏祭りの飾り」の展示の一環として、江戸時代の町家の店先に造り物を展示しています。まずは、その4点の造り物を、それぞれの制作の元となった「造物趣向種」とあわせてご紹介します。
造物趣向種「布袋、仏具一式」
今昔館の布袋(建具屋に展示)
造物趣向種「鶏、化粧具一式」
今昔館の鶏(小間物屋に展示)
造物趣向種「獅子、嫁入り道具一式」
今昔館の獅子(唐物屋に展示)
造物趣向種「鞍馬之僧正坊、塗り物一式」
今昔館の鞍馬之僧正坊(本屋に展示)

 以上4点は、開館当初からの展示です。いずれも、一式もので何かに見立てるという原則を守っていますが、大きさで迫力があるのは、嫁入り道具一式の獅子、素材の風合いを生かした見立てで、本物そっくりで見事にだまされるという点では、化粧具一式の鶏でしょうか。刷毛をひよこに見立てているあたりは秀逸です。

 今昔館では、開館10周年を記念して、2011年10月~11月に「大つくりもの『浦島太郎と竜宮城』」を開催しました。その際に、ミュージアムボランティア町家衆によって新たな造り物が制作されました。現在では、その成果品も江戸時代のフロアに展示され造り物の仲間入りをしています。

今昔館の「帯尽くしの宝船」(呉服屋に展示)

今昔館の「竹尽くしの蟷螂」(呉服屋に展示)

今昔館の「杓子如来」(人形屋に展示)

 以上、合計7点の「造り物」が江戸時代のフロアの各お店に展示されています。「化粧具一式の鶏」と「帯尽くしの宝船」は、それぞれのお店の商品を使って何かに見立てるという原則に沿った展示が行われています。

 天神祭りでは、かつて天満市場の人たちがシジミの貝殻でこしらえ境内を飾り立てたフジ棚を、天満天神御伽衆が2002年に造りました。2005年には乾物で猩々を、2006年には文房具で鳳凰を造りました。
蜆貝で造った藤棚(大阪人2011年8月号増刊より)
乾物で造った猩々(大阪人2011年8月号増刊より)
文具で造った鳳凰(大阪人2011年8月号増刊より)
 今回は、連載中の「今昔館のあまり知られていない展示」をお休みさせていただき、天神祭とも縁の深い「造り物」のご紹介をしました。執筆にあたり、高島幸次先生の「コミュニケーションを誘発する「造り物」-大阪天満宮の祝祭を中心に-」、大阪人2011年8月号増刊「天神祭の歩き方地図」、「住まいのかたち 暮らしのならい-大阪市立住まいのミュージアム図録-」を参考にさせていただきました。
 造り物とは「祭礼や正遷宮などの奉祝の意味で造られ、町角に飾ったり、町中を引き廻したりする造形物をいう。」という考え方もあります。この意味からは、御迎人形も「造り物」の一つという見方もできます。高島先生はこの考え方を採っておられます。



〇今週のイベント・ワークショップ

7月20日から9月4日までの間は、休まず開館いたします。

7月24日(日)、25日(月)
着物・ゆかたでご来館の方は、入館料無料です!



7月18日、20日~30日
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日 ※日曜日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。
時 間:11:30、14:30

7月24日、31日(日)
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


7月23日(土)
町家衆イベント ワークショップ『風鈴を作ろう』

①13時30分 ②14時30分
当日先着各回10名、参加費300円
*当日10時より受付で参加整理券を販売します
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆


7月24日(日)
町家衆イベント 絵本で楽しい時間

むかし話などの絵本を表情豊かに読み聞かせます。じっくりとお聞きください。
時 間:14:30~15:00


7月30日(土)
イベント ヘルマンハープ コンサート

バリアフリー楽器ヘルマンハープと共に・・・
14時~15時
出演:シュトラーセ


7月31日(日)
町家衆イベント ワークショップ『ハンカチを染めよう』

1回目13時~、2回目14時30分~
※当日10時より8階受付で参加整理券を販売します
当日先着各回10名 材料費400円
対象:どなたでも[小学3年生以下は保護者同伴要(入館料要)]
講師:大阪くらしの今昔館 町家衆


そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。


大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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初めての方はこちらからどうぞ。≫http://www.sumai-machi-net.com/howtouse

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