2018年2月4日日曜日

京都図絵(大礼記念京都大博覧会)

 大正から昭和にかけて活躍した鳥瞰図絵師で、生涯において3000点以上の鳥瞰図を作成し「大正広重」と呼ばれた吉田 初三郎(よしだ はつさぶろう、1884年3月4日~1955年8月16日)氏の作品から、今回は、昭和3年(1928)に出版された「京都図絵(大礼記念京都大博覧会)」をご紹介します。

昭和3年(1928)に昭和天皇即位大礼を祝して「大礼記念京都大博覧会」が開催されました。従来の岡崎公園に加え,二条城横の京都刑務所跡地,および恩賜京都博物館の3か所が会場にあてられました。入場者数は約318万人。


 この絵図は、大礼記念京都大博覧会事務局が出版者となり、会場案内図を兼ねて作成されたものです。


 横長の地図ですので、東から西へ3枚に分けて紹介します。
 1枚目は、琵琶湖から大博覧会東会場(岡崎公園)にかけて。初三郎氏の鳥瞰図は独特のデフォルメが特徴で、必ずと言っていいほど富士山が描かれています。この地図にも、遠景として地図の右上の名古屋と東京の間に、富士山が描かれています。
 東会場の周りには琵琶湖疎水が描かれ、北側には平安神宮、銀閣寺、大文字山、根本中堂が描かれています。
 疎水を挟んで南側、京都駅の北東には大博覧会南会場(恩賜京都博物館)があります。会場への交通機関ともなる市電が縦横に走っています。
 背景には、比良山や伊吹山も描かれています。


 2枚目は、鴨川から大博覧会西会場(京都刑務所跡地)にかけて。二条駅のすぐ前に、こんなに大きな刑務所があったことも驚きです。西会場の右手(東)には二条城、御所、下鴨神社、宝池があり、手前(南)には、東西の本願寺が描かれています。 
 背景には、比叡山や鞍馬山が描かれています。


 3枚目は、大博覧会西会場(京都刑務所跡地)から嵐山にかけて。
 嵐山付近を見ると、渡月橋、中之島公園、天龍寺、清凉寺から大覚寺、大沢池、廣沢池、小倉山から清滝まで描かれています。
 背景には鞍馬山、高尾山と愛宕山。さらに、愛宕山の左を見ると、初三郎流のデフォルメで、保津川下り、亀岡、綾部、福知山から松江が描かれ、下関に至るとあります。日本海も描かれています。地図の左下には、大阪、神戸、宝塚も描かれています。


 初三郎と同時代には彼の作品を模した鳥瞰図作家が多数いましたが、初三郎作品には模倣作との決定的な違いがありました。それは彼が鳥瞰図製作の際に該当地の風土や歴史を事前に調査し、さらに現地に入って踏査写生および取材を行っていたことです。全国各地で現在有名になっている観光名所、景勝地には初三郎が踏査取材中に見いだし作品中で発表した所も少なくありません。

 この絵図も細部にわたってきめ細かく描かれています。工業化と勧業政策の目的が一応の到達を見たことから、大正末頃をピークに博覧会への熱は全国的に衰退していきました。京都の地理歴史に詳しい方の、コメント、ご意見をよろしくお願いします。地図は、京都府立京都学・歴彩館、京の記憶アーカイブからお借りしました。

0 件のコメント:

コメントを投稿