2016年10月24日月曜日

今週の今昔館(30) 20161024

〇今昔館のあまり知られていない展示(その20)
 近世のフロアのあまり知られていない展示の10回目は、こちらの図面です。

 この図面は9階近世のフロアの連続平面図です。
 近世のフロアに再現された「大坂町三丁目」は架空の町ではありますが、江戸時代の船場の町のデータに基づいて再現された町です。
 大阪船場の町割は、城と港を結ぶ東西の道がメインで「通」、それと直交する南北の道は「筋」または「横町」と呼ばれ、主要道の「通」は幅4間、脇道の「筋」は幅3間で、これが格子状に交差して、方40間の街区を形づくり、中央には東西方向に背割下水(太閤下水)が走り、町境になっていました。
 宅地割は通に間口を開き、奥行きは20間と一定していました。一つの町は「通」を挟んで建ち並ぶ町家からなる「両側町」を構成していました。
 宅地割から想定される建屋の状況は、町家の正面が町並みを形づくる通と、町家の側面を見せる筋とに分かれ、空間的な階層性があったとされていました。
 「町通りと筋にははっきりと格差があって、家の正面を見せるか、側面を見せるかの差である」との説もありますが、実態について調べてみると、「通」に面しては一戸建てと表長屋の町家、「筋」に面しては通に開口した町家の側面と、筋に開口した表長屋、そして街区中央部には一戸建てと裏長屋が配置され、全体としてヒエラルキーを持った居住空間を形成していたことがわかります。
 連続平面図をよく見ると、合薬屋、呉服屋、唐高麗物屋、町会所は町家(一戸建て)であるのに対し、建具屋と小間物屋、人形屋と本屋は、表長屋となっていることが確認できます。
 街区の中央部の空間構成を見ると、各戸の裏宅地には裏長屋や土蔵のほかに前栽や空き地が配置され、街区全体から見るとオープン・スペースとして効果的に機能していました。また、土蔵が背割下水に沿って建ち並び、さらに背中合わせの隣町の土蔵群も含めると土蔵の帯が掲載されています。土蔵は厚い壁を持ち、表面は漆喰塗りで仕上げた防火建築ですから、いざ火災の時には防火帯になり、延焼を食い止める効果もありました。以上、谷直樹館長の著書「町に住まう知恵」を参考にさせていただきました。


 展示室内に再現するに当たって、「通」を挟んだ南北の敷地のうち、北側は店部分のみ、南側は店と住まい部分を切り取って再現しています。南側もすべては再現できていませんが、船場の町の構成を踏まえ、実在した店の資料に基づいて、実物大で再現されています。緑で囲った部分が今昔館で再現されている範囲です。
 近世のフロアの入り口は木戸門となっており、木戸門から表通りに沿って一街区の約半分の範囲が再現されています。通の突き当たりは鏡になっていますので、鏡に映る像を含めると一街区の長さを感じ取ることができます。「夏祭りの飾り」の展示の際は、天神丸があるためによく見えませんが、「商家の賑わい」の展示の際には、鏡に映る町並みをご確認いただくことができます。


 こちらの図面は、8階近代のフロアの住まいの六景のうち「北船場~旧大坂三郷の近代化」の模型を制作する際に作成された図面です。
 堺筋は、明治45年(1912年)に市電が敷設される際に3.3間(約6m)から、12間(21.8m)へと拡幅されました。江戸時代の大坂は東西方向の道路が主で4.3間幅であったのに対し、従である南北方向の道路は3.3間幅しかなく、堺筋といえども例外ではありませんでした。
 まず、明治41年(1908年)に南側の日本橋3交差点~恵美須交差点間が12間(約21.8m)に拡幅され、大阪市電南北線が敷設されました。次いで、北浜1交差点~日本橋3交差点間が拡幅され、大阪市電堺筋線が敷設されました。この図面は拡幅後の堺筋を描いています。
 一方、東西方向の通については、昭和5(1930)年、平野町のうち堺筋から西側が道幅13mに拡げられて町並みが一新されました。「軒切り」と呼ばれています。一方、東側は、まだ江戸時代とあまり変わらない町並みが続いていました。東側も昭和8年に拡幅されることになります。



〇今週のイベント・ワークショップ

10月24日、26日~29日、31日、11月2日~5日
町家ツアー

住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日(※日曜日は下記のとおり、町家衆による町家ツアーがあります。)
時 間:11:30、14:30

10月30日、11月6日
町家衆イベント 町家ツアー

江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00


10月29日(土)
イベント 町家寄席-落語

江戸時代にタイムスリップ!大坂の町で、落語をきいてみませんか
出演:桂出丸 桂りょうば
14時~15時

10月29日(土)
町家衆イベント 町の解説

江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

11月3日(木・祝) イベント 乙女文楽
上方の地で生まれ親しんだ芸能。磨かれた芸の技をご覧ください
出演:乙女文楽座
14時~15時

11月5日(土) ワークショップ 『ふくろうのストラップを作ろう』
各回先着10名、1人300円
*当日10時より受付で参加整理券を販売します
①13時30分 ②14時30分

11月6日(日) 町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。
あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
開催日:お茶会と同日
時 間:14:30~15:00

11月6日(日) 町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。
当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
開催日:第1・3日曜
時 間:13:00~16:00

11月6日(日) イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日10時30分より8階ミュージアムショップでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
13時~15時



そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。

大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。

 「住まい・まちづくり・ネット」では、大阪市立住まい情報センター主催のセミナーやイベントの紹介、専門家団体やNPOの方々と共催しているタイアップイベントの紹介などを行っています。イベント参加の申し込みやご意見ご感想なども、こちらから行える双方向のサイトとなっています。
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