〇今昔館のあまり知られていない展示(その2)
前回に続いて、8階近代のフロア「モダン大阪 パノラマ遊覧」の近代都市住宅年表のコーナーをご紹介します。
15年前の開館当時からずっと展示されている年表ですが、手前に並んでいる冷蔵庫やアイロン、ガスコンロなどのくらしの道具の変遷の方に気をとられて、バックの壁面が年表になっていることに気が付かない方が多いようです。
明治以降から現代までの大阪の住まいと暮らしの歴史を、「都市住宅の変容」を軸に、市街地や郊外居住の変化などの流れも含めて年表にまとめたものです。
この年表の下の段には各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。
今回は、年表の左端、古い時代から見ていきましょう。
左端の建物は適塾です。適塾の建物は、昭和15(1940)年に「緒方適塾趾」の名称で大阪府の史蹟に指定され、翌年、大阪大学に寄贈されたことから、「緒方洪庵旧宅及塾」の名称で国の史跡指定を受けました。建物は戦災による空襲を免れ、昭和39年に「住宅(緒方洪庵旧宅及塾)」国の重要文化財指定を受け、昭和42年に「旧緒方洪庵住宅」の名称に変更されました。昭和51年から56年にかけての修理、その後、阪神淡路大震災や東日本大震災の被害を踏まえ、平成25年1月からから耐震改修工事の検討に入り、10月から工事を始め、翌年3月に竣工しました。これが現在の適塾です。
現在の適塾の表構え(正面の意匠)は、大正4(1915)年の軒切り以降の姿です。2階の軒先が高い割に虫籠窓が小さく、1階の軒庇が高い位置に設けられています。適塾の表構えに関する古い部材が残されていないので、洪庵時代の表構えは推測の域を出ませんが、「建屋取調図面」によって明治19年当時、すなわち北浜通の軒切り以前の間取りが判明したので、明治初年の表構えを類推することができます。軒切りの規模については、表の軒先が40センチほど下がることになり、1階の軒先も低くなり、江戸時代の大坂らしい町家の外観になります。
軒切り以前の表構えを残した船場の町家はないので、歴史資料で考察する以外にありません。そこで「守貞謾稿」「街廼噂」といった文献と古写真や絵画資料を参考にすると、大阪の町家の表構えが再現できます。このような手続きを経て復元された当時の表構えが、ここにパネル展示されています。
以上、大阪くらしの今昔館の谷館長の論文「適塾(旧緒方洪庵住宅)の建築史的・文化財的価値」から抜粋して紹介しました。
〇企画展「船場花嫁物語」が始まっています
平成28年6月26日(日)までの開催です。
会期中の休館日:火曜日と第3月曜日、6月14日(火)、20日(月)、21日(火)
江戸時代から経済の中心地として栄えた大阪では、船場の豪商を中心に武家の婚姻儀礼に倣った華やかな婚礼が執り行われていました。
船場の商家では、嫁いだ娘が一生不自由しないよう着物や装身具、生活道具を調え、荷物目録を添えて婚家へと送り出しました。それは娘への財産分けという意味もあったようです。一方、花嫁を迎える婚家では専用の蔵をつくり、花嫁道具を収めたといいます。婚礼の儀式は、結納に始まり、花嫁道具の荷物送りの行列、これらを披露する荷飾り、そして祝言披露宴と続きます。このような婚礼の伝統は、昭和の戦前期まで受け継がれてきました。
本企画展では、昭和14年、船場の商家・廣野家が調えた花嫁仕度の品々を公開します。これらは、着物、宝飾品、家具調度品類いずれをとっても、職人が技術の粋を尽くした工芸品であり、船場商人の底力と大阪の文化の豊かさを示すものです。幸いにも戦火を免れ、大切に保存されてきた花嫁道具の数々をこの機会に是非ご観覧ください。
※企画展について詳しくはこちらをご覧ください。
◆関連イベントとして「ギャラリートーク」を開催します。
〇「船場のお嫁入り支度」
6月19日(日) 14:00~
佐野恵美子氏 :本展展示花嫁道具所蔵者
1947年(昭和22年)生まれ。画廊シャノワール主催。
昭和14年に結婚されたお母様のお嫁入り道具を大切に保管され、これまでにも公開されてきました。
今回、お母様の思い出とともにお嫁入り道具についてお話いただきます。
※当日開始時刻までに会場へお越しください。
但し企画展の入館券が必要です。
〇今週のイベント・ワークショップ
6月13日、15日~18日、22~25日
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:11:30、14:30
6月18日(土)
町家衆イベント ワークショップ 「折り紙(有料)」
13時30分~15時
6月19日(日)
イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日10時30分より8階ミュージアムショップでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
時間:13時~15時
6月19日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
時間:14:30~15:00
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
時間:13:00~16:00
そのほかのイベント・ワークショップはこちらからご覧いただけます。
そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
前回に続いて、8階近代のフロア「モダン大阪 パノラマ遊覧」の近代都市住宅年表のコーナーをご紹介します。
15年前の開館当時からずっと展示されている年表ですが、手前に並んでいる冷蔵庫やアイロン、ガスコンロなどのくらしの道具の変遷の方に気をとられて、バックの壁面が年表になっていることに気が付かない方が多いようです。
明治以降から現代までの大阪の住まいと暮らしの歴史を、「都市住宅の変容」を軸に、市街地や郊外居住の変化などの流れも含めて年表にまとめたものです。
この年表の下の段には各時代の代表的な住宅の立面図が同じスケールで描かれています。
今回は、年表の左端、古い時代から見ていきましょう。
左端の建物は適塾です。適塾の建物は、昭和15(1940)年に「緒方適塾趾」の名称で大阪府の史蹟に指定され、翌年、大阪大学に寄贈されたことから、「緒方洪庵旧宅及塾」の名称で国の史跡指定を受けました。建物は戦災による空襲を免れ、昭和39年に「住宅(緒方洪庵旧宅及塾)」国の重要文化財指定を受け、昭和42年に「旧緒方洪庵住宅」の名称に変更されました。昭和51年から56年にかけての修理、その後、阪神淡路大震災や東日本大震災の被害を踏まえ、平成25年1月からから耐震改修工事の検討に入り、10月から工事を始め、翌年3月に竣工しました。これが現在の適塾です。
現在の適塾の表構え(正面の意匠)は、大正4(1915)年の軒切り以降の姿です。2階の軒先が高い割に虫籠窓が小さく、1階の軒庇が高い位置に設けられています。適塾の表構えに関する古い部材が残されていないので、洪庵時代の表構えは推測の域を出ませんが、「建屋取調図面」によって明治19年当時、すなわち北浜通の軒切り以前の間取りが判明したので、明治初年の表構えを類推することができます。軒切りの規模については、表の軒先が40センチほど下がることになり、1階の軒先も低くなり、江戸時代の大坂らしい町家の外観になります。
軒切り以前の表構えを残した船場の町家はないので、歴史資料で考察する以外にありません。そこで「守貞謾稿」「街廼噂」といった文献と古写真や絵画資料を参考にすると、大阪の町家の表構えが再現できます。このような手続きを経て復元された当時の表構えが、ここにパネル展示されています。
以上、大阪くらしの今昔館の谷館長の論文「適塾(旧緒方洪庵住宅)の建築史的・文化財的価値」から抜粋して紹介しました。
〇企画展「船場花嫁物語」が始まっています
平成28年6月26日(日)までの開催です。
会期中の休館日:火曜日と第3月曜日、6月14日(火)、20日(月)、21日(火)
江戸時代から経済の中心地として栄えた大阪では、船場の豪商を中心に武家の婚姻儀礼に倣った華やかな婚礼が執り行われていました。
船場の商家では、嫁いだ娘が一生不自由しないよう着物や装身具、生活道具を調え、荷物目録を添えて婚家へと送り出しました。それは娘への財産分けという意味もあったようです。一方、花嫁を迎える婚家では専用の蔵をつくり、花嫁道具を収めたといいます。婚礼の儀式は、結納に始まり、花嫁道具の荷物送りの行列、これらを披露する荷飾り、そして祝言披露宴と続きます。このような婚礼の伝統は、昭和の戦前期まで受け継がれてきました。
本企画展では、昭和14年、船場の商家・廣野家が調えた花嫁仕度の品々を公開します。これらは、着物、宝飾品、家具調度品類いずれをとっても、職人が技術の粋を尽くした工芸品であり、船場商人の底力と大阪の文化の豊かさを示すものです。幸いにも戦火を免れ、大切に保存されてきた花嫁道具の数々をこの機会に是非ご観覧ください。
※企画展について詳しくはこちらをご覧ください。
拡大表示はこちらから |
◆関連イベントとして「ギャラリートーク」を開催します。
〇「船場のお嫁入り支度」
6月19日(日) 14:00~
佐野恵美子氏 :本展展示花嫁道具所蔵者
1947年(昭和22年)生まれ。画廊シャノワール主催。
昭和14年に結婚されたお母様のお嫁入り道具を大切に保管され、これまでにも公開されてきました。
今回、お母様の思い出とともにお嫁入り道具についてお話いただきます。
※当日開始時刻までに会場へお越しください。
但し企画展の入館券が必要です。
〇今週のイベント・ワークショップ
6月13日、15日~18日、22~25日
町家ツアー
住まいのミュージアム「大阪くらしの今昔館」の9階「なにわ町家の歳時記」では、楽しいガイドツアーをおこなっております。当日ご来館の方は、自由に参加していただけます。
※団体でお越しの場合は、事前にお申し込みください。
開催日:平日・土曜日
時 間:11:30、14:30
6月18日(土)
町家衆イベント ワークショップ 「折り紙(有料)」
13時30分~15時
6月19日(日)
イベント 町家でお茶会
町家の座敷で「ほっと一息」一服いかがですか
先着順50名、茶菓代300円
※当日10時30分より8階ミュージアムショップでお茶券を販売します
協力:大阪市役所茶道部
時間:13時~15時
6月19日(日)
町家衆イベント 町家ツアー
江戸時代大坂の町並みについて町の特色や見どころをわかりやすく解説します。
時 間:13:10~14:00
町家衆イベント 今昔語り
大阪に残る昔ばなしを、町家の座敷でお聞かせします。あたたかくなつかしい風情をお楽しみください。
時間:14:30~15:00
町家衆イベント 町の解説
江戸時代の大坂では人々はどのように暮らしていたのか。当時の史料(複製)とともに町会所で詳しく説明します。
時間:13:00~16:00
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そのほか定期開催のイベントはこちらからご覧ください。
大阪くらしの今昔館の展示内容や利用案内などについて詳しくはこちらからどうぞ。
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